mathdiaryのブログ

数学についての覚え書きを雑多にしていきます.

点P

部分空間に関する内部, 外部, 閉包, 境界

$(X, \mathcal{O}_X)$ は位相空間とし, $(Y, \mathcal{O}_Y)$ はその部分空間とする. $(X, \mathcal{O}_X)$ および $(Y, \mathcal{O}_Y)$ の閉集合全体の集合をそれぞれ $\mathfrak{A}_X$, $\mathfrak{A}_Y$ と表す. $A \subset Y$ とし,

  • $i_{X}(A)=X$ における $A$ の内部
  • $i_{Y}(A)=Y$ における $A$ の内部
  • $e_{X}(A)=X$ における $A$ の外部 $=i_{X}(X-A)$
  • $e_{Y}(A)=Y$ における $A$ の外部 $=i_{Y}(Y-A)$
  • $f_{X}(A)=X$ における $A$ の境界
  • $f_{Y}(A)=Y$ における $A$ の境界
  • $c_{X}(A)=X$ における $A$ の閉包
  • $c_{Y}(A)=Y$ における $A$ の閉包

と定める. このとき

  • $c_{X}(A) \cap Y =c_{Y}(A)$
  • $i_{X}(A) \subset i_{Y}(A)$
  • $e_{X}(A) \cap Y = e_{Y}(A)$($\subset$を$=$に訂正)
  • $f_{X}(A) \supset f_{Y}(A)$

が成り立つ.

【証明】

  • $c_{X}(A) \in \mathfrak{A}_X$ なので, $c_{X}(A) \cap Y \in \mathfrak{A}_Y$. よって $Y$ における閉包の定義より $c_{Y}(A) \subset c_{X}(A) \cap Y$. $c_{Y}(A) \in \mathfrak{A}_Y$ より, ある $F \in \mathfrak{A}_X$ があって $c_{Y}(A) = F \cap Y$ となる. $X$ における閉包の定義より $c_X(A) \subset F$ なので $c_X(A) \cap Y \subset F \cap Y = c_{Y}(A)$. よって示された.
  • $a \in i_{X}(A)$ とすると, ある $U \in \mathcal{O}_X$ で $a \in U \subset A$ となるものが存在する. ここで $U \subset A \subset Y$ より $U=U \cap Y \in \mathcal{O}_Y$ であるから $a \in i_Y(A)$ でもある. よって示された.
  • $a \in e_{X}(A) \cap Y$ とする. ある $U \in \mathcal{O}_X$ があって $a \in U \subset X-A$ となる. $a \in Y$ でもあるので特に $a \in U \cap Y$ である. $U \cap Y \in \mathcal{O}_Y$ であり, $U \cap Y \subset (X-A) \cap Y = Y-A$ であるから, $a \in e_Y(A)$ である. 逆に$x \in e_Y(A)$とする. $\exists U \in \mathcal{O}_Y$ で $x \in U \subset Y-A$ となるものがある. 相対位相の定義より $\exists V \in \mathcal{O}_X$ で $U=V \cap Y$ となるものがとれる. つまり $x \in V \cap Y \subset Y-A$. もしも $V \cap A \neq \varnothing$ だとすると, $A \subset Y$ より $V \cap Y \cap A \neq \varnothing$ となり, $V \cap Y \subset Y-A$ に矛盾. よって $V \cap A = \varnothing$, すなわち $V \subset X-A$ である. よって $x \in e_X(A)$ である. もともと $x \in Y$ だったので $x \in e_X(A) \cap Y$ が示された.
  • $ f_X(A) = X-( i_{X}(A) \cup e_{X}(A) ) $
    $ \supset Y-( ( i_{X}(A) \cup e_{X}(A) ) \cap Y ) ) $
    $ \supset Y-( ( i_{Y}(A) \cup e_X(A) ) \cap Y ) $
    $ \supset Y-( i_Y(A) \cup ( e_X(A) \cap Y ) ) $
    $ \supset Y-(i_Y(A) \cup e_Y(A) ) = f_Y(A) $ より示された.


等しくなくなる例
$X=\mathbb{R}^2$, $Y=\mathbb{R}$ とし, 通常の位相を与えるものとする. $A=Y$ とすると, $i_X(A)=\emptyset, i_Y(A)=\mathbb{R}, f_X(A)=\mathbb{R}, f_Y(A)=\emptyset$ となる.

整数環 $\mathbb{Z}$ において乗法に関する $2$ の逆元がないことのメモ

整数環 $\mathbb{Z}$ において, 乗法に関する $2$ の逆元がないことのメモ.

実数体 $\mathbb{R}$ において $2$ の逆元 $\frac{1}{2}$ が存在し, これが整数でないので示された」として良さそうだが, 整数に関する定理は整数の性質だけを使って示すほうがよさそう.

【証明1】

ある整数 $n$ が $2n=1$ を満たすとする. 一般に順序と演算の整合性から $1>0$ は導かれるので, 仮定と合わせて $2n=1>0$ を得る. つまり $n+n>0$ である. もしも $n \leqq 0$ ならば $n+n \leqq 0$ より矛盾なので, 背理法により $n>0$ (不等式の両辺を2で割ったわけではない). 一方,

$2(n-1)=2n-2=1-2=-1 < 0$

だから上と同様にして $n-1<0$ . つまり $n<1$ (両辺に $1$ を足した). これらより $0<n<1$ . これを満たす整数は存在しない.

このことを再び背理法で示す. もしこのような整数 $n$ があったとすると, 正の整数であることより特に自然数である. また $n<1$ であることより $n=1×n>n×n=n^2$ . これを帰納的に続けていけば

$n>n^2>n^3> \cdots$

と続いていく. ところが任意の自然数は $0$ に対して有限回後続数をとったものなので, $n$ から無限に降下していくのはおかしい(有限回という概念は自然数が無い状態でも考えられるものであろうか). よって矛盾.

【証明2】

任意の整数 $ n $ と $ m $ について, ある整数 $ q $ と正の整数 $r$ で $|m|>r>=0$ を満たすものが一意的に存在して $n=qm+r$ となることを使う.

$2n=2×n+0, ~~ 1=2×0+1$

と表すことができるが, 余りの部分が一致していない. よって余りの一意性より矛盾.

【証明3】

$2n=1$ とする. $n$ は整数であるが, 特に $n>0$ の時は自然数に一致することは認めるものとする(整数の定義が曖昧なので今は認めるものとします. あとで追記するかも). 証明1と同様にして $n>0$ が出る. よって $n$ は $0$ でない自然数なので, ある自然数 $ m $ の後続数である.

自然数のサクセッサー関数を ${\rm Suc}$ とおく. $n={\rm Suc}(m)$である. ${\rm Suc}$ の性質から

$1={\rm Suc}(0), ~~ 2n=n+n={\rm Suc}(n+m)$

${\rm Suc}$ の単射性から $ 0=n+m $ . 再び ${\rm Suc}$ を使って $ n+m={\rm Suc}(m+m) $ . つまり $ 0={\rm Suc}(m+m) $ . いま $ m $ は自然数なので $ m+m $ も自然数. したがって $ 0 $ はある自然数の後続数になる. しかしこれは自然数の定義に反する. よって矛盾.

【まとめ】

自然数や整数や足し算の定義が曖昧なのでところどころ曖昧なままの証明になってしまった. ここらへんを勉強しなければならない. ただ個人的に1と3はかなり公理に近いところだけを使ってできたのではないかなぁと思っている. 特に3は数の大小関係をほぼ使わないで示しているように見えるのでもうすこし考察したい.

順序について

$X$ を集合とする. $X$ 上の二項関係とは次の写像である.

$ \rho : X \times X \rightarrow \{ T, F \} $

ここで集合 $ \{ T, F \} $ は真理値の集合を表す. $T$ が True, $F$ が False のつもりである. $ \{ 1, 0 \} $ で代用しても問題ない.

このような写像を定める代わりに, 直積集合 $X \times X$ の部分集合 $ R $ を定めてもよい. この場合, $X \times X$ における $ R $ の特性関数が上記の $ \rho $ に対応する. 以下では二項関係とは $ R $ のように, 直積集合の部分集合として定めることにする.

集合 $ X $ 上の半順序関係とは $X \times X$ の部分集合 $ R $ で以下の条件を満たすもののことである.

  • $\forall x \in X, (x, x) \in R$
  • $\forall x, y \in X ~ \{ (x, y), (y, x) \in R \Rightarrow x=y \}$
  • $\forall x, y, z \in X ~ \{ (x, y), (y, z) \in R \Rightarrow (x, z) \in R \}$

通例, 半順序関係 $ R $ において $(x, y) \in R $ であることを $x \leqq y$ と書く. 半順序集合 $ X $ を $(X, \leqq)$ と書く.

例えば $X = \{ 1, 2 \}$ に対して $ R = \{ (1, 1), (2, 2) \} $ と定めると, これは $X$ 上の半順序関係となる. このとき $1 \leqq 2$ も $ 2 \leqq 1 $ も成立しないことに注意. 半順序関係ではこのように比較不可能な二元が存在しうる.

半順序集合 $(X, \leqq)$ で, 比較不可能な元たちが存在しないもの, すなわち

$\forall x, y \in X$ について $x \leqq y$ または $y \leqq x$

が満たされるようなものを特に全順序集合と呼ぶ.

空集合 $\emptyset$ 上にはただ一つの半順序 $R=\emptyset \subset \emptyset \times \emptyset$ が存在し, これによって $\emptyset$ は全順序集合となる. というのも, 半順序の定義は全称量化子 $\forall$ を用いて定められており, これは空集合上では常に真となるからである.

ちなみにこれを写像で表すと

$\rho : \emptyset \rightarrow \{ T, F \}$

という空写像に対応することになる. 終域 $ \{ T, F \} $ は一定なので, 空集合上の半順序はただ一つであることに矛盾しない.

半順序集合 $(X, \leqq)$ の部分集合 $A$ の上界とは $x \in X$ で

$\forall y \in A, y \leqq x$

を満たすもののことである. $x \in A$ である必要はない.

半順序集合 $(X, \leqq)$ であって, その任意の全順序な部分集合が上界を持つようなものを帰納的という.

$(X, \leqq)$ を帰納的な半順序集合とする. 先に述べたように空集合 $\emptyset$ は $X$ の全順序部分集合となる. すると帰納的であることの定義から $\emptyset$ の上界が存在しないといけない. したがって $X \neq \emptyset$ であることが導かれる.

Zorn補題は「帰納的半順序集合は極大元をもつ」と存在性を主張しているが, 帰納的という仮定がある時点で空集合ではないので問題ない.