mathdiaryのブログ

数学についての覚え書きを雑多にしていきます.

点P

自然数の定義について

自然数についてメモ.

$y$ が集合のとき, 対の公理より $\{ y \}$ は集合. よって再び対の公理より $\{ y, \{ y \} \}$ は集合. 和集合の公理より $S(y):=y \cup \{ y \}$ という風に記号を定めれば, $S(y)$ は集合. 無限公理:

$\exists x^*(\varnothing \in x^* \land \forall y(y \in x^* \to S(y) \in x^*))$

によりある無限集合 $x^*$ の存在が保証される. 上の論理式のカッコの中身の論理式を, $x^*$ を自由変数として持つ論理式と思い, $\varphi (x^*)$ と表すことにする. これらを用いて

$\omega := \{ z \in x^* ~;~ \forall X(\varphi(X) \to z \in X)\}$

と定める. 直感的に言えば, $\varphi$ を満たすような集合すべての共通部分として $\omega$ を定めた. すると内包性公理により $\omega$ は集合になる. $\omega$ は次の性質を持つことを示す.

$\forall x(x \in \omega \land x \neq \varnothing \to \exists y(y \in \omega \land x=S(y)))$

そこで, この命題の否定である

$\exists x(x \in \omega \land x \neq \varnothing \land \forall y (y \not\in \omega \lor S(y)=x))$

を仮定して矛盾を示す. このような $x$ を一つ決めておく. すると内包性公理より $\omega \setminus \{ x \}$ は集合. $z \in \omega \setminus \{x\}$ とすると, $x$ の取り方から $S(z) \neq x$ であり, また $\omega$ の定義から $S(z) \in \omega$. また $x \neq \varnothing$ なので $\varnothing \in \omega \setminus \{x\}$. よって, $\varphi(\omega \setminus \{x\})$ が成り立つことになる. すると $\omega$ の定義と $x \in \omega$ より $x \in \omega \setminus \{x\}$ ということになるが, これは矛盾を導く. よって命題が示された. すなわち $\varnothing$ でない $\omega$ の元はすべて何かしらの $\omega$ の元に後続する元であるということを主張している.

またどのような集合 $x$ についても $x \in S(x)$ であるから $S(x) \neq \varnothing$ である. よって $\varnothing$ はいかなる元の後続でもない.

 

実はこのような集合 $\omega$ は(集合 $x$ の取り方に依存して決まっているように見えるが)ただ一つであることが示され, そこでそれを自然数と呼ぶ. 自然数の定義としてしばしば $\mathbb R$ の部分集合であって, $0$ を元として持ち, かつ継承的なもの全体の共通部分として定めるものがあるが, この定義でも厳密な定義となっている理由は $x$ をどう取ってもよいからである. つまり $\omega$ を定めるときに $\{ z \in \mathbb R ~;~ \cdots \}$ として定めている(実数を定義するためには自然数が定義されていなければならないのでこのような定義は循環的に見えるかもしれないが, 人間が定義するしないに関わらず実数に対応するような集合はどこかに存在しているので, まあ寛容に認めてもいいのではないか).