平方数が偶数ならば元の数も偶数であることについて
$n$ が整数のとき, $n^2$ が偶数なら $n$ も偶数という命題は, 対偶を用いて証明する例としてよく使われる. しかし対偶を使わないで証明できないか?という意見を見たのでやってみる. ただ, あくまで示したい命題の対偶は使わないだけであって, 証明の中には二重否定則を暗黙的に使用している箇所もあり得る.
整数の部分集合 $A$ を, $A=\{n \in \mathbb{Z} ~|~ n^2は偶数 \}$ として定める. $A$ が加法に関して $\mathbb{Z}$ の部分群になっていることを示す.
- $0^2=0$ なので $0 \in A$. つまり $A$ は加法についての単位元をもつ.
- $n, m \in A$ とする. $(n+m)^2=n^2+2mn+m^2$ は明らかに偶数になっているので $n+m \in A$. つまり $A$ は加法について閉じている.
- $n \in A$ とする. $(-n)^2=n^2$ よりこれは偶数なので $-n \in A$. つまり $A$ は逆元について閉じている.
以上より $A$ は群になることが示された.
一般に $\mathbb{Z}$ の部分群は, ある整数 $k>0$ によって $k\mathbb{Z}$ と表される. $A=k\mathbb{Z}$ とおいて $k$ を求める.
しかしこれは容易で, $0, 2 \in A$ かつ $1 \notin A$ なので $k=2$ しかありえない. したがって $A$ は偶数全体の集合と一致していることがわかった. そもそも2乗したら偶数になるような整数をすべて集めた集合が $A$ だったのだから, 命題が示されたことになる.
閉区間上で$C^r$な関数の拡張について
$I=[a, b]$ を閉区間とし, $f : I \rightarrow \mathbb{R}$ を関数とする. $f$ が $I$ 上で $C^1$ 級であることを以下のように定める.
- $f$ は開区間 $(a, b)$ 上で通常の意味で $C^1$ 級.
- $x = a$ での右微分係数 $\displaystyle \alpha := \lim_{x \rightarrow a + 0} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} \in \mathbb R$ が存在する.
- $x = b$ での左微分係数 $\beta \in \mathbb R$ が存在する.
- 開区間 $(a, b)$ 上での $f$ の導関数 $f'$ について
$\displaystyle \lim_{x \rightarrow a + 0} f'(x)=\alpha$, $\displaystyle \lim_{x \rightarrow b - 0} f'(x)=\beta$ が成り立つ.
よって $(a, b)$ 上の導関数 $f'$ を閉区間 $I$ 上の連続関数に拡張することができる. それを同じ記号 $f'$ で表す.
$1 \leqq r < \infty$ とする. 閉区間 $I$ 上の関数 $f$ が $C^r$ 級であるとする. このとき $f$ が $C^{r+1}$ 級であるとは, $I$ 上の連続関数 $f^{(r)}$ が上の意味で $C^1$ 級であることとして, 帰納的に定義する. つまり $C^2$ 級であるとは, 閉区間 $I$ 上での導関数(連続関数であるということしか分かっていない)$f'$ が $C^1$ 級であることを言う.
【命題】
閉区間 $I=[a, b]$ 上で定義された関数 $f$ は上の意味で $C^r$ 級($1 \leqq r < \infty$)であるとする. このとき $I$ を含むある開区間 $J$ と, $J$ の上で定義された (通常の意味での) $C^r$ 級関数 $g$ が存在して, $g|_{I} = f$ となる.
【証明】
$J:=(a-1, b+1)$ とおき, $g : J \rightarrow \mathbb R$ を,
- $a-1 < x < a$ のとき $\displaystyle g(x) = f(a)+\sum_{k=1}^{r} \frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k$
- $a \leqq x \leqq b$ のとき $g(x)=f(x)$
- $b < x < b+1$ のとき $\displaystyle g(x) = f(b)+\sum_{k=1}^{r} \frac{f^{(k)}(b)}{k!}(x-a)^k$
と定める. ただし $f$ や $g$ の微分係数はそれぞれ右, 左微分係数であるとする. この定め方から明らかなように, $g$ は $f$ の拡張になっている($x=a, b$ で $C^r$ につながっていることを確かめればよい).(証明終)
証明から明らかなように, $J=\mathbb R$ としてとることができる.
自然数の定義について
自然数についてメモ.
$y$ が集合のとき, 対の公理より $\{ y \}$ は集合. よって再び対の公理より $\{ y, \{ y \} \}$ は集合. 和集合の公理より $S(y):=y \cup \{ y \}$ という風に記号を定めれば, $S(y)$ は集合. 無限公理:
によりある無限集合 $x^*$ の存在が保証される. 上の論理式のカッコの中身の論理式を, $x^*$ を自由変数として持つ論理式と思い, $\varphi (x^*)$ と表すことにする. これらを用いて
と定める. 直感的に言えば, $\varphi$ を満たすような集合すべての共通部分として $\omega$ を定めた. すると内包性公理により $\omega$ は集合になる. $\omega$ は次の性質を持つことを示す.
そこで, この命題の否定である
を仮定して矛盾を示す. このような $x$ を一つ決めておく. すると内包性公理より $\omega \setminus \{ x \}$ は集合. $z \in \omega \setminus \{x\}$ とすると, $x$ の取り方から $S(z) \neq x$ であり, また $\omega$ の定義から $S(z) \in \omega$. また $x \neq \varnothing$ なので $\varnothing \in \omega \setminus \{x\}$. よって, $\varphi(\omega \setminus \{x\})$ が成り立つことになる. すると $\omega$ の定義と $x \in \omega$ より $x \in \omega \setminus \{x\}$ ということになるが, これは矛盾を導く. よって命題が示された. すなわち $\varnothing$ でない $\omega$ の元はすべて何かしらの $\omega$ の元に後続する元であるということを主張している.
またどのような集合 $x$ についても $x \in S(x)$ であるから $S(x) \neq \varnothing$ である. よって $\varnothing$ はいかなる元の後続でもない.
実はこのような集合 $\omega$ は(集合 $x$ の取り方に依存して決まっているように見えるが)ただ一つであることが示され, そこでそれを自然数と呼ぶ. 自然数の定義としてしばしば $\mathbb R$ の部分集合であって, $0$ を元として持ち, かつ継承的なもの全体の共通部分として定めるものがあるが, この定義でも厳密な定義となっている理由は $x$ をどう取ってもよいからである. つまり $\omega$ を定めるときに $\{ z \in \mathbb R ~;~ \cdots \}$ として定めている(実数を定義するためには自然数が定義されていなければならないのでこのような定義は循環的に見えるかもしれないが, 人間が定義するしないに関わらず実数に対応するような集合はどこかに存在しているので, まあ寛容に認めてもいいのではないか).