mathdiaryのブログ

数学についての覚え書きを雑多にしていきます.

点P

平方数が偶数ならば元の数も偶数であることについて

$n$ が整数のとき, $n^2$ が偶数なら $n$ も偶数という命題は, 対偶を用いて証明する例としてよく使われる. しかし対偶を使わないで証明できないか?という意見を見たのでやってみる. ただ, あくまで示したい命題の対偶は使わないだけであって, 証明の中には二重否定則を暗黙的に使用している箇所もあり得る.

 

整数の部分集合 $A$ を, $A=\{n \in \mathbb{Z} ~|~ n^2は偶数 \}$ として定める. $A$ が加法に関して $\mathbb{Z}$ の部分群になっていることを示す.

  • $0^2=0$ なので $0 \in A$. つまり $A$ は加法についての単位元をもつ.
  • $n, m \in A$ とする. $(n+m)^2=n^2+2mn+m^2$ は明らかに偶数になっているので $n+m \in A$. つまり $A$ は加法について閉じている.
  • $n \in A$ とする. $(-n)^2=n^2$ よりこれは偶数なので $-n \in A$. つまり $A$ は逆元について閉じている.

以上より $A$ は群になることが示された.

一般に $\mathbb{Z}$ の部分群は, ある整数 $k>0$ によって $k\mathbb{Z}$ と表される. $A=k\mathbb{Z}$ とおいて $k$ を求める.

しかしこれは容易で, $0, 2 \in A$ かつ $1 \notin A$ なので $k=2$ しかありえない. したがって $A$ は偶数全体の集合と一致していることがわかった. そもそも2乗したら偶数になるような整数をすべて集めた集合が $A$ だったのだから, 命題が示されたことになる.