mathdiaryのブログ

数学についての覚え書きを雑多にしていきます.

点P

写像の空間に誘導される距離

$(X, d)$ を距離空間とし, $S$ を任意の集合とする. また,

$ F = \{ f:S \rightarrow X ~|~ f(S) \subset X$ は $(X, d)$ においての有界集合 $\}$

と定める. $L_1, \cdots, L_n$ は, $F$ から $F$ への任意の写像とする. このとき $\rho : F \times F \rightarrow \mathbb R$ を, 任意の $f, g \in F$ について

$\rho(f, g)=\sup \{ d \left( f(s), g(s) \right), d \left( L_1(f)(s), L_1(g)(s) \right), \cdots, d \left( L_n(f)(s), L_n(g)(s) \right) ~|~ s \in S \}$

と定めると $\rho$ は $F$ 上の距離関数となる.

 

(証明)

$\rho \geq 0$ となること, $\rho(f, g) = \rho(g, f)$ となること, そして $f=g$ なら $\rho(f, g)=0$ となることは明らか. 逆に $\rho(f, g)=0$ とする. すると $\rho$ の定義から $\forall s \in S$ について

$0 \leq d(f(s), g(s)) \leq \rho(f, g)=0$

となるので, $d(f(s), g(s))=0$. $d$ は $X$ 上の距離関数なので $f(s)=g(s)$ となり, $s$ は任意であったので $f=g$ が導かれる.

最後に三角不等式を満たすことを示す. $f, g, h \in F$ とする. $d$ は距離関数なので, $\forall s \in S$ について

$d(f(s), h(s)) \leq d(f(s), g(s))+d(g(s), h(s))$
$d(L_j(f)(s), L_j(h)(s)) \leq d(L_j(f)(s), L_j(g)(s))+d(L_j(g)(s), L_j(h)(s)) ~~ (j = 1, \cdots , n)$

が成り立つ. よって

$\rho(f, h) \leq \sup \{ d(f(s), g(s))+d(g(s), h(s)), d(L_j(f)(s), L_j(g)(s))+d(L_j(g)(s), L_j(h)(s)) ~|~ s \in S, j=1, \cdots n \}$

$\leq \rho(f, g)+\rho(g, h)$.

以上より三角不等式が示された. よって $\rho$ は距離関数となる.(証明終)

 

上では $L_j$ の個数は有限個であったが, 一定の条件を満たしていれば無限個であってもよい. 以下, それについて述べる.

命題
$L_\lambda : F \rightarrow F$ からなる写像族 $\{ L_\lambda \}_{\lambda \in \Lambda}$ は任意の $f, g \in F$ について $\displaystyle \sup \{ d(L_\lambda(f)(s), L_\lambda(g)(s)) ~|~ \lambda \in \Lambda , s\in S \} < \infty$ を満たすとする. このとき $f, g \in F$ について
$\rho(f, g)=\max \{ ~ \sup\{d(f(s), g(s)) ~|~ s \in S\}, ~ \sup\{ d(L_\lambda(f)(s), L_\lambda(g)(s)) ~|~ \lambda \in \Lambda, s \in S\} ~ \}$

と定めればこれは $F$ 上の距離関数になる. ここで加えた条件は, 関数 $\rho$ の値が実数値として決まるように加えたものである.

証明は上と同じである.