$4\cos\theta + 2\sin\theta = \sqrt{2}$ のときの $\tan\theta$
個人的に面白かったのでメモ. 問は以下のようなもの.
$0^\circ < \theta < 180^\circ$ かつ $4\cos\theta + 2\sin\theta = \sqrt{2}$ のとき, $\tan\theta$ を求めよ.
最初にやった解き方は以下.
$\cos\theta=0$ のときは $\sin\theta=1$ となりこれは条件を満たしていないので $\cos\theta \neq 0$. よって与式の両辺を $\cos\theta$ で割ることができて,
となる. この両辺を2乗したうえで, 右辺に $\displaystyle 1+\tan^2\theta=\frac{1}{\cos^2\theta}$ を適用すれば,
整理して2で割って,
因数分解して,
よって $\tan\theta = -1, -7$ となる. ところが $\theta$ の範囲についての条件より $\sin\theta > 0, \cos\theta < 0$ であるから, これを加味したうえで具体的にこれらの値を求めて $4\cos\theta + 2\sin\theta$ に代入してみると, $\tan\theta=-1$ は条件を満たさないことが分かる. よって $\tan\theta=-7$. (終わり)
うっかり最初は両方とも解かと思ってしまったが, チェックすると一方はダメなことが分かった. 本当は $\tan\theta = -1$ は $\theta = -45^\circ$ に対応した解であり, $\theta$ の範囲に制限がなければちゃんと解になりうる(実際, $\displaystyle \cos\theta=\frac{1}{\sqrt{2}}, \sin\theta=-\frac{1}{\sqrt{2}}$ は問題にある等式を満たしている)のだが, 今の場合は角度の条件を満たさない. $\tan\theta$を直接求めると $\sin, \cos$ が同符号か異符号かの情報は残るが, それぞれの符号がどうであったかの情報はつぶれてしまう. それゆえに一見正しそうに見えるが間違いの物が紛れ込んでしまう. $\tan$ を直接扱うと不都合が起きる例はやったことがなかった(あるいは忘れてた)のでやや驚いた. というわけで $\cos\theta$ を直接求めるとどうなるかやってみた.
与えられた等式の両辺を2乗して整理すると,
となる. $0^\circ < \theta < 180^\circ$ の範囲では $\cos\theta$ の符号は分からないが, $\sin\theta$ は正であると分かる. 上式の右辺は常に負だから $\cos\theta$ は負であると分かる.
$\displaystyle \sin\theta = \sqrt{1-\cos^2\theta}$ を与式に代入して,
根号のある項だけ左辺に残して両辺を二乗して整理すると,
因数分解して,
先の議論より $\cos\theta < 0$ であるから, $\displaystyle \cos\theta = -\frac{\sqrt{2}}{10}$ である. $\displaystyle \sin\theta = \frac{7\sqrt{2}}{10}$ と分かる. ゆえに $\tan\theta=-7$ である.(終わり)
このように $\cos$ を直接求めるようにすれば符号の情報がつぶれずに残るので, 解を出す時点で誤った符号のものをはじくことができる. 個人的には条件を満たさない解をはじくのが非常に分かりやすくなったと感じる. 何かの本には載っているかもしれないが, 解が複数現れることが予見されるときは, なるべく情報を落とさないように気を付けながら議論を進めたいものである.