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分数の性質メモ

分数どうしの掛け算, 割り算の法則を示そうと思います. ときどき大学数学の話が混ざっていますが大部分は一次方程式をいじっているだけです.

 

実数 a と実数 b≠0 に関して定まる分数 a/b とは一次方程式

a=bx

の解と定めます(この定義が一般的であるのかは分かりませんが, 少なくとも問題はないと思います).

なお, この方程式の解が実数の範囲内で一意に存在することは,

・関数 y=bx が実数全体で単調であること( b≠0 という仮定がここで活きます).

アルキメデスの公理.

・中間値の定理.

から導くことができます.

下二つは実数の連続性を示すものなので, 実際は単調性・実数の連続性・実数の性質から導くことができると思われます.

 

【分数同士の掛け算】

a, b, c, dは実数とし, b と d は 0 でないとします.

このとき分数 a/b および c/d はそれぞれ以下の方程式たち

a=bx ・・・(1)

c=dy ・・・(2)

の解 x, y と定めることにしていたのでした.

すなわち今の場合では x=a/b, y=c/d という状態です. 代入したわけではなくこのように定めたのです.

さて今考えたいのは分数同士の掛け算なので, xy という実数がどのような方程式を満たすのかを調べます. 

天下り的ですが次のような性質が満たされると分かります.

***************

(bd)(xy)=(bx)(dy) (実数の積に関する結合則と可換性)

上の式の右辺に式(1)と(2)を代入

(bd)(xy)=ac

***************

すなわち xy という実数は方程式

(bd)z=ac

の解 z の条件を満たしていると分かります.

ゆえに分数の定義から xy=ac/bd

すなわち (a/b)(c/d)=ac/bd が示されました.

 

【分数同士の割り算】

a, b, c, d は掛け算のときと同様に定め, x, y も同様に定めます.

つまり x=a/b, y=c/d です.

ここで示したいのは (a/b)÷(c/d)=ad/bc という式です.

すなわち x/y=ad/bc を示したいと言い換えられます.

そこで次の方程式を考えます.

yz=x ・・・(3)

x, y は一つの実数として定まっているので, これは z を変数とする方程式だと考えられます.

そして分数の定義より, z=x/y です. この z がどのような性質を満たしているかを調べます.

***************

(bd)(yz)=b(dy)z

式(2)より dy=c を上の式の右辺に代入

(bd)(yz)=(bc)z

式(3) より yz=x を上の式の左辺に代入

(bd)x=(bc)z

d(bx)=(bc)z (左辺の順序交換)

式(1)より bx=a を上の式の左辺に代入

ad=(bc)z

***************

よって z は方程式 ad=(bc)z を満たすので, 分数の定義よりz=ad/bcとなります.

すなわち (a/b)/(c/d)=ad/bc が示されました.

 

以上により分数の掛け算・割り算の法則が(多分)示せたのではないでしょうか.

 

複素数の場合】

上の分数の定義には, 実数の全順序性がクリティカルに使われています. これは中間値の定理や関数の単調性などに含まれており, これがあるおかげでwell-definedとなっています.

しかし複素数体実数体と違って全順序体ではないので, これでは分数の法則を実数の場合でしか示していないことになります. そこで複素数の場合も示します.

 a=bz なる複素係数方程式の解の存在性は全順序性を使わなくても示せます. 「代数学の基本定理」によります.

 

代数学の基本定理 - Wikipediaによれば

―『次数が 1 以上の任意の複素係数一変数多項式には複素根が存在する』―

とのことです.

つまりいま f(z)=bz-a なる複素係数一変数多項式を考えれば, これの解の存在性が言えます.

 

一意性に関しては仮に二つの異なる複素数 z, z' が共に解になると仮定すれば

bz-a=0

bz'-a=0

辺々を引いて

b(z-z')=0

左辺において仮定より b≠0, z-z'≠0 なので b(z-z')≠0

矛盾.

背理法より一意性が示されました.

(このようにしなくても, bz-a の次数が1だから高々1つしか根を持たないと言えば十分です)

 

以上により複素数の場合も一次方程式の一意な解として分数が定義できることになります.

それ以外の部分では全順序性を使ってはいないので, 実数の場合の議論をそのまま複素数にも適用できます.

 

以上メモ終わり