mathdiaryのブログ

数学についての覚え書きを雑多にしていきます.

点P

$n$ の $n$ 乗根の収束値

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} n^{\frac 1 n} = 1$ を微分を使わずに示すメモ.

初めの有限個の項の値は収束値に関係ないので, $n \geqq 2$ の範囲で考えて良い. するとこの範囲では $\displaystyle n^{\frac 1 n} > 1$ なので(これは背理法で示される), 各 $n$ に対してある $h_n > 0$ が存在して $\displaystyle n^{\frac 1 n} = 1 + h_n$ と書ける. すると, $n \geqq 2$ と $h_n>0$ のおかげで,

$\displaystyle n=(1+h_n)^n \geqq 1+nh_n+\frac{1}{2}n(n-1)h_n^2$

が成り立つ. これを整理して両辺を $n(n-1)$ で割れば($n\geqq 2$ なので割れる),

$\displaystyle h_n^2+\frac{2}{n-1}h_n-\frac{2}{n} \leqq 0$

という不等式が得られる. これを $h_n$ について平方完成して整理すると,

$\displaystyle \left( h_n+\frac{1}{n-1} \right)^2 \leqq \frac{2}{n} + \frac{1}{\left(n-1\right)^2}$

両辺の正の平方根をとれば,

$\displaystyle \left| h_n+\frac{1}{n-1} \right| \leqq \sqrt{\frac{2}{n} + \frac{1}{\left(n-1\right)^2}}$

ゆえに $\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}\left( h_n + \frac{1}{n-1} \right) = 0$. これより,

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} h_n = \lim_{n \rightarrow \infty} \left( h_n+\frac{1}{n-1} \right)-\lim_{n \rightarrow \infty}\frac{1}{n-1}=0-0=0$

以上より,

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}n^{\frac 1 n} = \lim_{n \rightarrow \infty}\left( 1 + h_n \right) = 1+0=1$

2018年度東京大学理系数学第2問

面白かったので一つの解法を書く.

 

(1) まず地道に計算することで,

$ \displaystyle \frac{a_n}{a_{n-1}}=\frac{2n+1}{\frac{1}{2}n(n+1)} $

を得る. 分母分子ともに整数となっていることは明らか. 分母と分子が互いに素であることを示す.

$n$ を1つ固定するとき, $a=2n+1$, $b=-8$ とおけば,

$\displaystyle a(2n+1)+b \left( \frac{1}{2}n(n+1) \right)=1$

となる. よってこれら2数はどの $n$ についても互いに素であることが分かった(共通因数を $d$ などとおいて上の式を書きかえれば $d=1$ しかないと分かる).

 

(2) 私見だが, (1) でわざわざ分母を $p_n$, 分子を $q_n$ とおいて求めさせたのはヒントではないかと思う. いま,

$\displaystyle a_n=a_1 \times \frac{a_2}{a_1} \times \frac{a_3}{a_2} \times \cdots \times \frac{a_n}{a_{n-1}}$
$\displaystyle =\frac{ 3 \times q_2 \times q_3 \times \cdots \times q_n }{ p_2 \times p_3 \times \cdots \times p_n }$

 さて(1)で求めた $q_n$ を見ると, 全て奇数であると分かる. ということは上式の分子は奇数であるから, もしも $p_2$ から $p_n$ のうちどれか1つでも偶数であったらもはや整数にはなりえない. そこで $p_n$ がいつ偶数になるかを調べれば, $p_3=6$ となっていると分かる. よって $n \geqq 3$ では $a_n$ は整数にならないので, あと調べるべきは $n=1, 2$ のみであり, $a_1$, $a_2$ はどちらも整数になっている.(終わり)


 初めは $a_n < 1$ になれば整数にはならないだろうと考えて, 大小関係から解こうと試みた. 実際これでも解けるのだが, $a_8$ まで手計算しなければならず, 試験会場では困難である.

写像の空間に誘導される距離

$(X, d)$ を距離空間とし, $S$ を任意の集合とする. また,

$ F = \{ f:S \rightarrow X ~|~ f(S) \subset X$ は $(X, d)$ においての有界集合 $\}$

と定める. $L_1, \cdots, L_n$ は, $F$ から $F$ への任意の写像とする. このとき $\rho : F \times F \rightarrow \mathbb R$ を, 任意の $f, g \in F$ について

$\rho(f, g)=\sup \{ d \left( f(s), g(s) \right), d \left( L_1(f)(s), L_1(g)(s) \right), \cdots, d \left( L_n(f)(s), L_n(g)(s) \right) ~|~ s \in S \}$

と定めると $\rho$ は $F$ 上の距離関数となる.

 

(証明)

$\rho \geq 0$ となること, $\rho(f, g) = \rho(g, f)$ となること, そして $f=g$ なら $\rho(f, g)=0$ となることは明らか. 逆に $\rho(f, g)=0$ とする. すると $\rho$ の定義から $\forall s \in S$ について

$0 \leq d(f(s), g(s)) \leq \rho(f, g)=0$

となるので, $d(f(s), g(s))=0$. $d$ は $X$ 上の距離関数なので $f(s)=g(s)$ となり, $s$ は任意であったので $f=g$ が導かれる.

最後に三角不等式を満たすことを示す. $f, g, h \in F$ とする. $d$ は距離関数なので, $\forall s \in S$ について

$d(f(s), h(s)) \leq d(f(s), g(s))+d(g(s), h(s))$
$d(L_j(f)(s), L_j(h)(s)) \leq d(L_j(f)(s), L_j(g)(s))+d(L_j(g)(s), L_j(h)(s)) ~~ (j = 1, \cdots , n)$

が成り立つ. よって

$\rho(f, h) \leq \sup \{ d(f(s), g(s))+d(g(s), h(s)), d(L_j(f)(s), L_j(g)(s))+d(L_j(g)(s), L_j(h)(s)) ~|~ s \in S, j=1, \cdots n \}$

$\leq \rho(f, g)+\rho(g, h)$.

以上より三角不等式が示された. よって $\rho$ は距離関数となる.(証明終)

 

上では $L_j$ の個数は有限個であったが, 一定の条件を満たしていれば無限個であってもよい. 以下, それについて述べる.

命題
$L_\lambda : F \rightarrow F$ からなる写像族 $\{ L_\lambda \}_{\lambda \in \Lambda}$ は任意の $f, g \in F$ について $\displaystyle \sup \{ d(L_\lambda(f)(s), L_\lambda(g)(s)) ~|~ \lambda \in \Lambda , s\in S \} < \infty$ を満たすとする. このとき $f, g \in F$ について
$\rho(f, g)=\max \{ ~ \sup\{d(f(s), g(s)) ~|~ s \in S\}, ~ \sup\{ d(L_\lambda(f)(s), L_\lambda(g)(s)) ~|~ \lambda \in \Lambda, s \in S\} ~ \}$

と定めればこれは $F$ 上の距離関数になる. ここで加えた条件は, 関数 $\rho$ の値が実数値として決まるように加えたものである.

証明は上と同じである.